旧衛生湯(現美容室あみん) [函館]
ここは、銀座通りのとある一角。
いや、銀座と言っても東京ではありません。
函館の銀座のことです。(笑)
今では路上駐車ばかりで、人っ子ひとり見当たらない函館銀座。
しかし……
大正から昭和の初めにかけて、ここはモボ・モガが闊歩する東京以北最大のカフェー街であったのだ。
☆
酒は~涙ぁ~か~溜息~かぁ~♪
藤山一郎の歌で一世を風靡した「酒は涙か溜息か」(作曲:古賀政男)。
この曲の作詞を手がけたのが高橋掬太郎である。
彼は国後島出身だが、当時函館日日(ひび)新聞に勤めながら詩や小説、脚本などを書いていた。
この曲は作詞家としてのデビュー曲である。
函館日日(ひび)新聞の建物は銀座通り、ちょうどこの衛生湯と同じ並びで、道路を二つ挟んで10軒目くらいに建っていたもよう。(昭和8年の読みにくい地図を、老眼鏡をかけて参照しています)
彼は連日のように銀座のカフェーで飲み歩いていたと言いい、言わば「酒は涙か溜息か」は、函館の銀座通りが生んだ名曲と言ってよいのだ。
ちなみに、石川啄木が勤務した函館日日(にちにち)新聞と、掬太郎が勤めた函館日日(ひび)新聞は別系列の新聞社である。
日日(にちにち)の方が日日(ひび)より早い創刊で、後者の方が日日(ひび)努力したのでこの名が付いた。
と言うのは嘘だが、この辺りはどうもややっこしい。(笑)
日日(ひび)新聞の社長を務めたことのある二代目太刀川善吉は、あのカテキン色の太刀川家洋館を建てた人物である。
注:日日(にちにち)と日日(ひび)の区別は、『月刊はこだでぃ』(9.10月号’91)によりました。
☆
旧衛生湯(現美容室あみん)
竣工は大正10年頃(1921)。
設計・施工は不詳。
煉瓦造2F建て。
☆
高橋掬太郎が足繁くかよった……かどうかは分かりませんが、これが銀座通りの旧衛生湯。(笑)
いかがでしょう?
さすが銀座のお風呂屋さん、大変にモダンなデザインです。
何度も言うように、函館は大変なカジノ街であった。
……いや、火事の街であった。(笑)
大正10年(1921)の大火で、函館区当局はこの辺りを防火地区に準拠した「火防線」として整備し、RC造などの耐火建築物を建てるように推奨する。
このお風呂屋さんは煉瓦造ではあるが、その流れを汲むものである。
この銀座通り、今でも当時のRC造建物が多く建ち並んでおり、日本のRC造技術の草創期を示す貴重な屋外博物館的な様相を示している。
えっへん!
と言いたいところだが、一般の観光客の目にはただの古っちい建物街でしかなく、しかも誰も歩いていないので観光コースからは大きく外れています。(笑)
☆
銀座の繁栄のシンボルでありながら、お風呂屋さんの後はファサードが随分改造されていて、昭和61年(1986)に今の姿に復元された。
復元当時は「おしゃれ館」という美容室だったけど、今は「あみん」というお店になっている。
いつ「あみん」に変わったのか知らないけれど、きっと いつまでも待っわ~♪ と歌ったことが功を奏したに違いない。(笑)
☆
さて、この建物のデザインであるが、1F入口はトスカナ式円柱で大袈裟なことに玄関の小さな庇を支えている。(笑)
この柱が二つ並んだ双柱はルネサンス以降のデザインで、この衛生湯も「ルネサンス」→「湯ネッサンス」としゃれたものと想像される。
と思いきや、玄関を「男湯」と「女湯」の二つに分ける必要からこうした双柱が生まれなんだなぁ~。(笑)
2Fの櫛形ペディメントも、腰窓からずいぶん離れていて唐突に浮いているなぁ~。
と思っていたら、旧い写真ではこのペディメントの下にはファンライトのついた両開戸が付いていた。
これでペディメントの謎は解けたものの、バルコニーも手摺もないので、2Fのドアを開けると下に落っこちてしまう。
う~ん、この仕掛けがどうしてもわからない。(笑)
柱がパラペットよりも立ち上り、更にバラストレードを取り払ってる。
これも、屋根から落っこちるのではないか?
と心配したものの、この屋根には上れませんので御心配は無用です。(笑)
また、随所に配置されたメダイヨンが効果的で、これぞ本格的新古典主義様式!
と形容して恥じない(?)、銀座を代表するかっこいいデザインである。
正面以外はあまりお見せしたくないのですが、まあ、せっかくなので横と後ろの写真をUPします。
↑横の写真
↑後ろの写真
ここで教訓!
★建物は、決して後ろから見ないこと。
女性は、たまに後ろから見た方がいい人がおりますが。……
余計なことですね。(笑)
【所在地】北海道函館市宝来町23-4 グーグルマップ
【ご案内】
現役バリバリの「大正湯」もございますので、どうぞごゆっくりお入りください。(笑)
おまけ
函館の歌といえば、サブちゃんの『函館の女(ひと)』が有名ですが、そのはるか以前に『函館ステップ』という歌があります。
あお~い う~み函館の~ 港~あければ~出船~の汽笛~♪
よ~ぶな~カモメ~よ~ 名残りをむぅ~ね~に~♪
切れたぁ~テープ~が~すぅすぅり~泣~く~♪
※誰も知らないでしょうね。(笑)
その2番の歌詞はこうです。
夢~のま~ち 函館の~ 街はぁ~楽しや~ 柳ぃ~がなび~く~♪
行こうか大門~ もどろか銀座~♪
招く~ネオンの~ 赤と青~♪
作詞はもちろん、高橋掬太郎(作曲:飯田三郎)です。
そして歌ったのが瀬川伸と言う函館出身の歌手で、瀬川瑛子さんのお父さんのようです。
この歌、宗男が小さい頃には、決まって遠足の時にバスガイドさんによって練習させられました。(笑)
その頃は、すでにサブちゃんの『函館の女(ひと)』が流行していたのですが、サブちゃんの歌は小学生には教育が悪いということで、この『函館ステップ』が選ばれたのです。
「そんな古臭ぇ歌、しらねえでぇ~!」
って、子供たちから文句を言われながらも、必死にバスガイドさんはこの歌を宗男たちに覚えさせようとしました。
おかげで今でもメロディーは忘れません。(笑)
※うる覚えのところがありましたけど、モーモータクシーのHPに歌詞がありました。
ありがとうございます。(笑)
宗男さん、こんばんは〜♪
いきなり「みあん」と読んでしまった粗忽者にございまする〜(笑)
この建物は確かに前からのみ観た方が、感動を保てる
ようで...(笑)
あの、でもたま〜に、こういう2階の扉を開けたら下に
落っこちる不思議な建物ってありますよね(^^;;
まあ、我が家のベランダも足乗せたら踏み抜きそうで
怖いのですが...って、これは違う話でした(爆)
ところで、師匠のこのブログ、製本して手元に置いて
読めたらいいのにな〜と思います(^皿^)v
もちろん、建築学の本として...(笑)
by かふぇおれ (2009-10-08 23:29)
にちにち と ひび って、ややこしい~ですね^^;
せっかく素敵な建物の前に自販機を置くなと言いたい
ところですが、あみんのロゴと赤がマッチしていて外灯も
(古そう)赤というところがお洒落です。
by mamitan (2009-10-09 00:58)
>かふぇおれさま
みあん、ですか?
なんか、猫みたいですね。(笑)
えっ!
かふぇおれさん家のベランダは、足を乗せると落っこちるのですか?
そう言うベランダ、宗男は好きでございます。
いやいや、宗男のブログはあくまでもお笑いですので、建築学だなんて言わないでください。
言うなれば「変築学」でございます。(笑)
>mamitanさん
そうそう、ルビが振ってないとややこしいですよね。
まあ、自販機は商売柄仕方ありませんね。
外灯は、古いと言うよりも、汚れているんです。(笑)
でも、かっこいい建物でしょう!
ここまで再現するには、相当な努力が必要だったと思われます。
民間の力に、感謝しないといけないですね~♪
by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2009-10-09 02:24)
おはよう御座いま~す。
函館は3回行きましたが、アミン・・記憶に御座いません、笑
酒~は涙か~ため息か~♪ 爺には懐かしい曲です。
by 旅爺さん (2009-10-09 06:05)
ひび に にちにち・・・
ややこしいですね^^;
by お茶屋 (2009-10-09 12:20)
今はもう出ていない?「はこだでぃ」…は、
私もずいぶん資料として参考にさせていただいた本です。
うちにもバックナンバーが何冊か、まだありますよ。
目の付け所というか、切り口がユニークで大好きでした。
そして、この美容室も…知ってますがな(w
向かいにあるbarは、かつて映画のロケにも使われていました。
ちょっとね、昔風に趣味的な映画でしたが。この通りの建物、
前はいいんですが、なかなか、写真には撮りづらくて。いつも、
望遠でパーツばかりを撮ってしまいます(苦笑
時代の流れでしょうがないのでしょうが、絶滅危惧種的な建物が
多いから、今のうちにしっかり見ておかないと…。
by MORIHANA (2009-10-09 12:40)
タイトル見ただけで“私ま~つ~わ♪”って歌いたくなってしまいました。
コカコーラの赤が良いアクセントになってますね。
大正地代の建物ってヨーロッパの建物みたいで素敵。
函館旅はこうゆう旧い建築見て歩くだけでも価値ありそうです。
by まぐろとわさび (2009-10-09 12:48)
やっぱりさ、なんて言ったって名前がいいよねぇ…。
今のも良いけど、昔のがね。だって“衛生”湯だもの。
世の中どんなに不衛生なのさ、って思うですよ(笑)
舞台裏を見ちゃいけないのは建築の世界も同じみたいね(>ω<)♪
宗男氏のこのブログ、ご本になったら二兎も買うです(ΦωΦ)ノ
買ったらサインしてね♪
秋田の“真っ暗夜景”記事の後ろに ●おまけ● で載せたよ。
もし良かったら、(お見せするようなモノぢゃないけど)ご覧くださいです。
by 二兎丸 (2009-10-09 14:37)
私は後ろ姿でお願いします(笑)
by macha (2009-10-09 17:59)
>旅爺さんさま
こんばんわ。
函館へは3回もお出でですか?
ありがとうございます。
ここは記憶になくて当然です。(笑)
観光コースからは外れておりますから。
酒は涙か~♪
懐かしく思っていただき、ありがとうございます。(笑)
>お茶屋さま
ひびとにちにち、これ、本当に分かりにくくて、今でもわかっていないかもしれません。(笑)
日日とか、毎日とか、昔から新聞の名前って、あんまり変わっていないんですね。
>MORIHANAさま
「はこだでぃ」、今はやっぱり出ていないんでしょうかね?
発行の幻洋社、元町から日吉町へ移ったみたいで。
家にあるのも、古い奴ばかりです。
やっぱり御存じでしたよね。(笑)
映画のロケですか?
函館はいろんな所がロケに使われておりますね。
銀座街は言うに及ばず、今では大門も寂れてしまっております。
宗男の小さい時は、大門へ出かけるのをわくわくして待ち望んだものですが。(笑)
確かに、銀座街は絶滅危惧種的な建物ばかりです。
>まぐわささま
いつもながら、おいしそうなお名前ありがとうございます。
やっぱり、あみんとくれば わたし待つは~♪ でございますよね。(笑)
函館にはこういう古い建物がたくさんあります。
これは地方都市としても大変珍しいものです。
どうぞ、足をお運びください。(笑)
>二兎丸さま
衛生湯ってお名前に引っ掛かってくれて、大変ありがとうございます。(笑)
やっぱり、お風呂は衛生的でなければなりませんからね。
きっと、ものすごく衛生的なお風呂だったんだと思います。(笑)
そうそう、何事も舞台裏は見ちゃいけませんね。
本になったら買ってくれますか?
おお、これでお二人様ご予約ですね。
いや、冗談です。(笑)
秋田の写真、ありがとうございます。
そこはかとなく、夜景でございます。(笑)
>machaさま
黄色いあひるさん、かわいいでございます。
え~、後ろ姿だなんて言わないでください。
どうしてもという場合は、仕方ありませんが。(笑)
by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2009-10-09 19:26)
私も前向きが自信ありですww
by HAL (2009-10-09 19:31)
良く見ると入り口が2個あり男女別々に入っていくようになっていて
お風呂屋さんだったのがうなずけますね。
今は美容院で現役の建物。
建築物は使っていてこそ命が吹き込まれますね。
by しろうさぎ (2009-10-09 20:09)
私 ま~つ~は♪
いつまでも ま~つ~は♪
「あみん」でした・・・
by 袋田の住職 (2009-10-09 21:23)
追伸
この前、七飯町から松前へ向かう途中、
北島御殿を見ましたよ!
by 袋田の住職 (2009-10-09 21:25)
私、待つわ~
ひびとにちにちが一緒になれるまで
紛らわしい名前をつけたのですね
あり得ないですね、今の世の中だったら。
by 八犬伝 (2009-10-09 21:38)
待つわ~♪ (←八犬伝さんとデュエット中。)
…そして 小さな石鹸 カタカタ鳴っちゃうんですよねぇ。
確かに正面は素敵なのですが、ヨコと後ろは…
予算オーバーですか?(笑)
by うに (2009-10-09 23:24)
前だけ見れば素敵な面構えですが・・・\(⌒▽⌒)/
by 花火師 (2009-10-10 00:15)
これまたアメリカ西部開拓時代の
銀行かサルーンみたいな建物ですねー@
元は湯屋とはこれまた中が気になり過ぎます.
中.今でもタイル張りの壁とかなんか
湯屋の面影が残っている物とかもあるのでしょうかー.
…それと髪を切りながらそっち系のサービ……
by 高穂 (2009-10-10 02:20)
>HALさま
はい。
HALさまはもちろん、前向きでしょう。
お魚の世界にも、バッシャンがたくさんいそうですね。(笑)
>しろうささま
そうなんですよ。
男湯と女湯の二つの玄関があります。
今は、片方しか使っていないようですが。
用途は変わっても、建物は使われていた方がいいですよね。
宗男もそう思います。
>袋田の住職さま
おお!
あみんをご存知でしたか?(笑)
北島御殿がございましたか。
宗男は見たことありませんが、さぞかしすごいんでしょうね。
函館にも、北島三郎記念館なんてのが出来たんですよ。
始めは良かったんですが、今は閑古鳥でしょうかね。(笑)
>八犬伝さま
ひびとにちにち、今じゃ考えられませんよね。
函館の新聞事情を調べますと、違う系列の「函館新聞」と言う名の新聞がたくさん出てきます。(笑)
当時はこんなこと、当たり前だったんでしょうね。
>うにさま
わお~!
八犬伝さまとの素敵なデュエット、ありがとうございます。
でも、小さな石鹸は、状況が違うような気が。(笑)
予算オーバーと言うよりも、始めから横と後ろは金を掛けないと決めたんでしょうね。
家を建てるときは、そういうことが多いものです。(笑)
>花火師さま
そうなんですよ。
前だけ素敵なんです。
だから、前だけ見るようにしてくださいね。(笑)
周りに家が建っていた時代は、前しか見られなかったわけですから、こうして全周が見られるようになったのは、やはり函館が冷え込んでいるせいでしょうね。
>高穂さま
銀行家サルーン……
ぎゃは~!
お風呂屋さんですよ。(笑)
中はほとんど改修されているはずで、お風呂屋さんの面影はどうなんでしょうね。
確かに気になりますが、美容院にも用がないため、一度も入ったことがございません。
そっち系のサービスはないと思いますよ。(笑)
by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2009-10-10 10:28)
さすが函館、風呂屋も洋風なんですね!!。モボとモガが仲良く洋装して桶をかかえてやってきて、入口の柱のところで左右に分かれる、っていうのが当時の流行の最先端だったんでしょうね。みなさん「あみん」といえば「待つわ~♪」なのですね、opas10はアミン大統領です(笑)
by opas10 (2009-10-10 11:16)
>opas10さま
そうなんですよ。
モボとモガが桶を抱えて……
いや~、想像するだけで面白いですね。(笑)
古い写真では、衛生湯と書かれたのれんが二つ掲げられておりまして、その前をカンカン帽をかぶった紳士が歩いている様子が残されております。
残念ながら、お風呂のお客さんではないようですが。(笑)
アミン大統領ですか?
確かに宗男も始めはそれを思いつきました。(笑)
by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2009-10-10 14:12)
今は美容室なんだぁ。
私なら喫茶店にするな。
by あら (2009-10-10 20:25)
うんうん、「あみん」といえば、♪私待つわ~ ですね~。
この歌ならハモリも出来るぐらい歌えますわよん。
「函館ステップ」は知らないですけど・・・。
とっても可愛い美容室ですね。一瞬外国かと思っちゃいました。当時としてはとてもハイカラでしたでしょうね。中はどうなってるのかしら。
でも、横と後ろが面白い(* ̄m ̄) ププッ なんだかドラマのセットみたいだわ~(笑)。
by kimuerichan (2009-10-10 22:38)
>あらさま
そうですね~。
喫茶店なら宗男も入れるんですが。(笑)
まあ、いろいろと事情がおありかと。
いずれにしても、使ってくださることが何よりです。
>kimuerichanさん
やっぱり、あみん派ですね。(笑)
ぜひ、ハモリを入れて歌ってください~♪
一瞬外国かと思いましたか?
後ろを見ると、日本だと言うことがばればれですね。(笑)
by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2009-10-11 00:57)
師匠、アップのペースの早さについていけません。
どうしたんですか?暇なんですか?(^^;
「あみん」と書くと、待つわですが「アミン」と書くとどっかの人肉食った大統領ですねぇ。どっちかってえぇ、私はそっち思い出します。
ここ銭湯だったら、無茶苦茶魅力的ですねぇ。
東京にも廿世紀風呂ってスペイン瓦のかなりモダンな銭湯があったんですけど、なくなってしまいました。
ともかくとっても素敵な建物です。
2Fのドアは開いたら鳩が出て来るような気がします。
by カンパネルラ (2009-10-18 09:25)
>カンパネルラさま
おお、ちょっとペースが速かったですか?
すいません。
はい。
ペースの速い時は仕事が暇なんです。(笑)
当時から見ても、これは相当ハイカラなお風呂屋さんですよね。
by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2009-10-22 16:17)